進む力をくれる手仕事。こぎん刺しの世界 vol.2
hitoharicoさんの企画展がスタート
昨年もご好評いただいたhitoharicoさんのこぎん刺し企画展が、今年も帰ってきました!今回はかなり前からお話を進めていたため、コロナによる外出自粛期間にもhitoharicoさん、ひとつひとつ作品を仕上げてくださったそう。その結果、アイテムの種類も数も昨年以上に増えているという噂です…!
というわけで、店主と二人、オンラインでhitoharicoさんにお話を伺いました。そもそも、こぎん刺しとは?というところから、今回初お目見えの素敵アイテムのご紹介まで、一気にお伝えいたします!
(2020.10.21 wed 更新)
“生活のため”の手仕事が、こぎん刺しのルーツ
▲小さな針刺し
ご自宅のキッチンから取材を受けてくださったhitoharicoさん。今から13年前、2007年の雑誌「天然生活」でこぎん刺しに出会い、日本の伝統的な手仕事として興味を持ったのがスタートだったのだといいます。
hitoharicoさん:「もともと手先を動かすのは得意なほうで、クロスステッチも趣味でやっていました。こぎん刺しに出会ってからブログで作品を載せていたところ、とある雑貨屋さんが見つけてくださって。委託販売を始めたのが作家活動のスタートでしたね。2012年のことです」
“ hitoharico “というなんともほっこりする作家名は、ひと針ひと針刺していくところから。そもそも、こぎん刺しとはどんなルーツを持った手仕事なのでしょうか。
hitoharicoさん:「もともとは、青森県の津軽地方に伝わる手仕事なんです。当時、農民に倹約令が出されていて、農民は絹を着てはいけない。許されたのが麻だけだったんですね。でも麻ってとても硬い繊維で、格子状のすきまができてしまいます。それを、農家の女性たちがこぎん刺しで隙間を埋めて防寒したり、重い農具を担ぐ時に擦り切れないようにと補強の意味で刺したりと、冬の農閑期、家族のために、生活のためにしていたのがこぎん刺しのルーツです」
あんなにも美しいものが、初めは「機能」のためだった。驚きました。
hitoharicoさん:「その後、だんだん農家の女性たちの間で、単に生活のためというところから、少しでも楽しく、という意識が芽生えていったようで、オリジナルの図案が生まれ、それが現代まで伝わったものがこぎん刺しの“伝統図案”と呼ばれているものです」
冬の農閑期にコツコツと刺し、楽しみを見出していった、というのも、なんだかコロナの自粛期間に生活をどう彩るかと考えていた現代の私たちにも通ずるところがあるなあ、と感じました。なんて今にふさわしい企画展なのでしょう!
▲小さなきんちゃく袋
▲くるみのチャーム
伝統やルーツを大切にしながらも、自分らしく
▲こぎんと藤編みのイヤリング。
今回準備いただいた作品は、伝統図案に基づいたもののほか、hitoharicoさんオリジナルの図案も。作家としての「オリジナリティ」を追求するうえでは、多くの葛藤があったといいます。
hitoharicoさん:「図案の目の数は奇数であること・糸の色は一色・伝統図案に基づくこと等、こぎん刺しには誰が刺しても同じものが出来上がることを魅力と捉える、一定のルールのようなものがあります。始めた当初は趣味の一環でしたし、作家活動をするうえで悩むことも多かったです。そもそも、青森がルーツなのに関東に住んで活動していていいのかな、とか、伝統図案・決まった材料のなかで、どうやって自分オリジナルの作品ができるかな、とか…。それができなくて、やめたくなったことも何度もあります」
でも、とhitoharicoさんがお話を続けます。
hitoharicoさん:「ここ数年、迷いはなくなりましたね。“ なるべく ”伝統図案・“ なるべく ”素朴に、そして自分らしいと自分が思える色使い、という心持ちを大切に活動するようになってから、なんとなく 自分の作品 ”というものができるようになってきたからでしょうか。うん、そんな気がします」
柔らかく笑う姿が印象的で、作品のあの温かさはこの方の手から生み出されているんだよなあ、なんて、スマホの画面越しにしみじみしてしまいました。
▲名刺入れ。実は昨年、わたしはからし色の子に一目惚れして連れ帰りました!愛用中です。
「昨年、amairoさんで企画展をしたことも、今後の作家活動を考えていくうえでの大きな出来事でした」とhitoharicoさん。
amairoには数回お客さんとして足を運んでいただいていたようで、本庄でのイベントで店主が企画展のお話を持ちかけた時には「はあ!あのamairoさんだ!」とまず驚きのほうが大きかったそう。企画展までの準備期間が短かったこともあり「数が用意できるかな、何がお届けできるかな」という不安もあったそうですが、最終的には同じイベントに出店していたパティスリー コ・ボナの奈々さんの後押しもあって、「これはチャンスだ!」と企画展のお話をお引き受けいただいたといいます。
雪が降り積もるように、図案ができていく喜び
▲草木染めのリネンを使った木枠のブローチ。
2度目の企画展となる今回。こぎん刺しの魅力って、どんなところにありますか?改めてhitoharicoさんにお尋ねすると、とても素敵な答えが返ってきました。
「雪が降り積もるように、図案ができていく喜びでしょうか」
ははあーーー!!!こぎん刺しを語るうえで、こんなにも素敵な表現がほかにあるでしょうか。ひと針ひと針進めるなかで、だんだんと形が見えてくる。信じてコツコツ進めれば、きっと何かが見えてくる。それはなんだか勇気のようなものだなあと。
hitoharicoさんのこぎん刺しに癒されるのは、作品の愛らしさはもちろんのこと、こぎん刺しを「雪が降り積もるように」と表現するhitoharicoさんの人柄が手から伝わり、勇気が込められているように感じるからなのかもしれません。
集中して疲れてしまったり、ストレスが溜まったりしないのか心配になり尋ねると、目は疲れるものの、頭は逆にスッキリするんだそうです。なんだか、hitoharicoさんとこぎん刺しの付き合い方がとても健全なものな気がして、羨ましくなりました。
▲ことりのサシェ(ラベンダー)
進む力をくれる手仕事
今回の企画展にあわせ、タグやショップカードも一新したhitoharicoさん。店主はそこに「決意」のようなものを感じたといいます。
▲小さなミラー。タグにも注目ですよ。
店主:「昨年、すごくお客様に喜んでいただけたことで、わたしもhitoharicoさんもとてもうれしかったんです。なので今年の企画展は、早めにhitohaicoさんにお声かけし、準備期間を長くたっぷり設けました。コロナの自粛期間に作られた作品たちは、進む力をくれるというか・・・勇気を身につけているような気持ちになるんじゃないでしょうか。昔、農民が寒くないようにと繕うことから始まったこぎん刺しのルーツともリンクして、ぎゅっと温かな企画展になったと思います。期間後半には御守り入れのオーダー会も併せて開催するため、期間中最初から最後まで楽しんでいただけると思います!今年だからこそのバリエーションと数量で、みなさまをお迎えいたします!乞うご期待!です!!!」
企画展は10/22(木)〜11/23(月・祝)まで
▲こぎん刺しのダーラナホース。こちらはhitoharicoさんのなかでも初の試みで、amairoの企画展でデビューです!
hitoharicoさん:「よくもったいなくて使えない、と言っていただくことも多いのですが、ぜひ使っていただきたいです!!!使ううちにこぎんが育って布と一体化し、糸が引っかからなくなるんです。丈夫になるというか・・・!そういう育っていくところも楽しんでいただけたらうれしいですね」
さあ、期待膨らむこちらの企画展は、明日10/22(木)からスタートです!ぜひ期間中に足をお運びくださいね。11/12(木)からの期間後半にはスペシャル企画として「こぎん刺しのお守り入れオーダー会」を予定しています。こちらも素敵なので、詳細は今後のインスタグラムをチェックしてください!
それでは、空が高くなり、秋も深まってまいりますがみなさまご自愛くださいませ。
きょうも1日、おつかれさまでした。明日もまた、素敵な1日を。
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hitoharico
こぎん刺しの世界 vol.2
10/22(木)〜11/23(月・祝)まで *定休日を除く
こぎん刺し御守り入れオーダー会は11/12(木)〜11/23(月・祝)まで期間限定開催
雑貨店amairo
11:00-18:00頃まで
定休日:水曜日 *臨時休業あり
最新情報はインスタグラムからご確認ください!