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埼玉県深谷市の小さな雑貨店 amairo
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姉のエッセイ“3歳と聞いて思い出すこと”

今回のコラムは特別回となります

今週末、21(日)で3周年を迎えるamairoに寄せて、コラム担当・店主の姉がエッセイを書きました。いつもとはちょっと違うお話。どうか楽しんでいただけますように。
(2019.04.19更新)

3歳と聞いて思い出すこと

 

春は嫌いだった。

 

花粉症の夫が鼻声になるし、うららかな日の翌日には大雨が降ったりと、気分が落ち着かない。でもここ数年、それも変わった。妹がお店を開いてから、桜のつぼみが膨らむ頃には「そろそろか」と思い、お花見でひととおり浮かれた後には「もうすぐか」と思う。

 

4月21日、amairoは3周年を迎える。

 

当時、妹が“雑貨屋を開く”と言ったのはとても意外だったけれど、よくよく考えてみれば当たり前のことのような気もした。昔から部屋の模様替えが好きで、夜中にタンスを動かす音が聞こえてきた。美意識も高かったように思う。彼女には誰になんとバカにされても覆さない、自分だけの“お気に入り”がいつもあった。あまり人にもモノにも執着しないわたしは、それがうらやましくもあった。

 

過去について本人がまだ明らかにしていないことも多いから、先立って語るのもはばかられるけれど、わたしと妹は3歳違いで、妹が生まれるまでの3年間、わたしは一体どうやって生きてきたのか見当もつかない。きっと親の愛情を一手に受けていたのだろう。でも、記憶にない。

 

唯一記憶にあるのは、母が妹を身ごもっていたとき。それも、臨月の時。

 

かつて深谷駅前を賑わせた唯一のデパート・キンカ堂のエスカレーターから、母は転げ落ちた。3歳手前だったわたしが下りエスカレーターに一人で乗り込もうとしたのを止めようと身重の体で駆け寄り、そのまま転がったのだという。

 

エスカレーターの緊急停止ボタンのジリジリジリという原始的な音と、店の人がうずくまる母めがけて駆け寄っていく姿が記憶にある。わたしは階の上からそれを眺めていた。エスカレーターに乗り込もうとしていたのは、わたしではない子供だった。母の見間違いだったのだ。もう、30年以上前のこと。

 

母がそのとき、もうこの子が無事に生まれてくるのは難しいかもしれないと覚悟を決めたこと。温和な父にかつてない勢いで叱られたこと。それでも奇跡的に、妹は何事もなかったかのように生まれてきてくれたこと。

 

物心ついた頃から幾度となくそのエピソードを聞かされていたわたしは心のどこかで、妹を守らなくてはという使命でも感じていたんだろうか。
いつでも妹の前を歩き、妹はわたしの後ろを無邪気に「ひーちゃん、ひーちゃん」とついてきていた。

 

そんな関係性も思春期を迎える頃には少し様子を変えた。相変わらず仲は良かったけれど、妹の背丈はいつのまにかわたしを追い越し、少し見上げて話をするようになった。話す内容は年を重ねるにつれて縦にも横にも広がっていった。いつも後ろにいた妹は、隣に並んで歩くようになった。お互いの仕事のこと、恋愛のこと、人生のこと、家族のこと、時にゲスな話もしながら。

 

amairoを好きになってくれる人が増えていくのを、コラムを書かせてもらうようになってから肌で感じ、いつの時かわたしは悟った。ああ、もう大丈夫なんだなあと。

 

彼女の居場所はここにあるし、わたし以外にも、お店を、彼女を、見守ってくれる人がこんなにもいる。昨年末に実施したコラムアンケートは、純粋にコラムについてのご意見を読みながらも、そんな気持ちにもさせられた。

 

彼女の大好きな“お茶とおやつの時間”をとびきり豊かにしてくれる人もいる。パティスリー コ・ボナの奈々さんだ。奈々さんのお菓子は、特にケーキは、妹もわたしもお世辞抜きに世界一だとおもっている。だからいつかは。

 

先日、桜がまだ満開になったばかりの頃だ。彼女に聞いた。「3周年迎えて、どう?」と。これまで一番大変だったことは「お店をきちんとあけること」だという。

 

「アスリートと同じで、同じっていうか、うん、同じで。自分の体調や気持ちを常に整えておかなくてはいけないのがね」と言った。

 

もっとドラマチックでダイナミックな答えを期待していたわたしは面食らった。そうかと思えばそのあと、amairoで実現したいことをドラマチックに、ダイナミックに、ほとんど一人でしゃべり続けた。

 

「お客さんがamairoで過ごす理想的な姿を想像すると、もっとこうあるべきっていうのがねえ、出てくるんだよね。
…だし、(彼女の口癖で“それに、”の意)一人ひとりの1票が大きいです。ほんとうに。お店なんてたくさんあるのに、ネットもあるのに、時間を割いて来てくれる。選んでくれるお客さんがいる。個人店だから一人ひとりの選択が支えだし、それが、やりたいことの原動力かな!」

 

と、ちょっといいことも言っていたのに、左サイドの髪はいつものようにハネていた。

 

 

わたしはそんな彼女の横顔が好きだ。昔から好きだったけれど、今は特に好きだ。遠くを見すぎず、目の前に咲くものを見逃さず、きゅっとしている。なよなよ、ベソベソ、頼りなく笑う彼女はこの3年間のうちに消え、鉄の女のようにみえる時さえある。(そう、きょうも叱られた)

 

次、わたしが姉としてできることはなんだろう。すっかり頼もしくなった隣に立ちながらそれを考えるのが、今はたのしい。

 

amairoさん、3周年、おめでとう。

 

3年間という長い月日を見守ってくださったみなさま、ありがとうございます。これからもどうぞ長い目で、どうぞご贔屓に。

 

きょうも1日、おつかれさまでした。明日もまた、素敵な1日を。

 

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すてきなおしらせ

 

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